Answer Left 08 ギガベース撃破 その5
「帰還しろだと…!」
シンには信じられなかった。まさに目の前で敵の襲撃を受け、壊滅していく味方艦隊。そしてそれを見殺しにしろというマシンオペレーター。
無線に交錯する悲鳴の中で、かれはある一つの事実を思い出していた。
−−この任務のクライアントはBFFではなく、GAだということを。
おのれGAめ、接収したかつての敵対企業とはいえ、我がBFFをこうもコケにしてくれるとは。
シンがBFFに勤めるのはリンクス戦争以前からである。彼の率いた時代のサイレント・アバランチは幾人ものGA社リンクスを退けてきたことを覚えている。
中には命を落とした者も少なくないだろう。だからリンクス戦争で壊滅したBFFをGAが接収すると聞いた時も、シンは真っ先に「勝者による支配」を想像した。
国家であれば属国化とでも言うべきか、ともかく彼の予想は悪くも現実のものとなっていたのだ。
BFF社員やリンクスの冷遇、不当な利益の略取、危険性の高い作戦の強要。口に出しこそしないものの、GA社の圧力は誰もが無言のうちに感じ取っていた。
「繰り返しまス。任務失敗、直ちに帰還−−。」
「断る!」
マイクに言葉を叩きつけ、彼はそのままオペレーター・アシストを切った。次いで急ぎ回線を開く。
「BFF全艦隊へ!こちらネクスト・シャウトアウト。只今より救援に向かう!」
間に合え。指先を通して伝わる焦りに応えてか、シャウトアウトはPA再装填を開始した。
−−−−
「命令違反ですね。いかがなさいますか、王大人。」
「なに、泳がせておけ。切り捨てるかどうかは上が決めるだろう。」
BFFはクイーンズランス襲撃以来海を避け、陸地に本拠を構えている。旧英国領北部の巨大な本社ビル"D9"は空に突き刺さるかのごとく高く聳え、
正面にはBFFのロゴが輝いている。今その最上階にも近いある一室で、その監視は行われていた。
出席者はわずか2名。しかし実質BFFの頂点にして支配者たる2名である。王大人と呼ばれた老翁・王小龍は今やBFF唯一のオリジナルであり、
リンクスの中でも最長老と噂高い。長い顎髭は白く染まりきり、それをつかむ指も皺だらけで震えている。
深く窪んだその目の奥に潜むのは、まさしく彼が体験してきた戦争の狂気と、その中で生きながらえてきた老獪の知謀である。
王小龍を背に立たせ、モニターを監視しているのはうら若い女性。彼女、つまり旧英国名門の末裔リリウム・ウォルコットは家系の外聞に漏れず優秀なリンクスであり、
あらゆる任務において最高の賛辞を受けるべき成果をあげてきた。
txt by uoi
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