Answer Left 10 ギガベース撃破 その7




爆音。
同時に今まで感じたことのないほどの衝撃を背中に受け、レンチは思考を途切らせた。 軽量機であるアカツキにも、そのダメージは無視できない。

「水平ロスト。
ブースター一時停止。
水平を初期化します...」

アカツキの受けた049ANSCの弾頭は、PAに大きな穴を空けてコア背部に直撃していた。 当然、神経を接続しているレンチもただでは済まない。

「かっ、ハッ。」

一定以上の痛覚は遮断されているとはいえ、今のレンチにはほぼその限界値が流れ込んでいた。

「水平取得。
ブースター再起動。異常なし。
機体構成点検。
兵装点検...」

コックピットが赤く点滅を始め、不吉なアラームが反響する。

「エラー。右背部兵装RDF-0700、確認できません。」

今のでやられたか!レンチは激痛の中、無意識に右背部レーダーのパージを指示する。 破損部品は早急に切り離さなければならない。
折れかけた箇所から火花を散らしながら、オーメル製レーダーがくすんだ海に音を立てて沈む。 気の遠くなるような痛みを押し退け、その無線はレンチの聴覚に割り込んだ。

「第1射、インパクト。」

敵と明らかなその声は低く冷たい。撃たれた背から心臓を抉られるような、殺意。

「第2射…。」

狙撃手!しかも口調からして軍上がりのプロフェッショナル。なら…。
未だ感覚のおぼつかない足でQBペダルを思いっきり蹴りこむ。 アカツキは彼の意志に軽量機らしい素早さで応え、何もない中空にその身を跳ねさせた。 狙撃方向から離れるように大きく飛んだ機体の周りに、剥げかけたPAが渦巻いている。

キンッ

先ほどよりは小さな弾丸が肩をかすめ、耳元から抜けていった。

「第2射、フェイル。」

何がフェイルだ、化物め。ともかくここまで来れば…。
そう思う彼の機体は今や射線にギガベースを挟み、一応だが狙撃手から隠れる形をとっていた。 痺れた指で回線を開く。

「ニコラァ!」

絞り出した声は自然と怒気が混じる。

「エクリプスより確認しました!西に距離2000、BFF社ネクスト・シャウトアウトです!」

2000。ネクストの戦闘距離じゃない。奴は本当に化物か…!

「レンチ!貴方の任務は無事完了しています!どうか今はご帰還ください!無駄な機体損傷は避けるべきです!」

「ふっざけんなァ!一発やられて逃げ帰れたぁ、てめえどこの腰抜けだ!」

「しかし…。」

「おまえの親父はそんな奴じゃなかった!」

予想はしていた。父親の話を出されるとニコラとしてはどうしても弱い。
ニコラの父親−−サー・マウロスクはオリジナルの一人であり、 ほかの多くのオリジナル同様アナトリアの傭兵の手によってリンクス戦争に没している。 その極端な権力志向は、直接の教えを受けたレンチにも強く強く引き継がれていた。

「わかりました…。」

確かに父なら黙って引き下がりはしないだろう。レンチへの退却指示も命令ではなく勧告だ。 補給艦隊の撃破も副目標として有効であり、そこに敵ネクストがいるならば排除するのも道理。
しかし彼女の父、最後の肉親であったサー・マウロスクは、退却命令を無視して死んでいったのだ。 自分がオペレーターとなった今、ニコラには寝ても覚めてもそれが頭にこびりついて離れない。

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