Answer Left 13 ギガベース撃破 その10
レンチは理解できなかった。今の衝撃は何だ。なぜPAが消えているんだ。
どうして攻撃したはずの自分のAPが減っているんだ。
「第3射、インパクト。」
当てられたのか。いや、それはそうとして俺が撃ったグレネードはどうした。
発射の手応えは確かにあった。なぜ爆発が起きな…。
その仮説を浮かべた途端、彼の全身は恐ろしさのあまり戦慄した。
さて彼の感じた恐怖を解き明かす前に、読者諸氏の誤解を一つ解いておかなければならない。
狙撃手は一発屋−−とかく単発の火力と奇襲性に優れる狙撃手はそういった誤解を受けがちだが、
真実は違うのだ。
これは歩兵の場合にも言えることだが、狙撃手ほど過去の経験を重んじる兵種は他にない。
当たり前の話だが、距離が伸びれば伸びるだけ、銃弾の受ける影響は増していく。風、標的の動き、
遮蔽物、気温、湿度−−ありとあらゆる要素が、普通の何倍も狙点から着弾点を遠ざける。
超長距離での弾道はもはや個人の実力で制御できるレベルではない。
だから、経験が必要なのだ。
不確定性を征することができるのは、いつだって膨大で確かなデータのみ。
長い長い訓練は銃を握る手が擦り切れ、汗に滲む血も乾いて割れるまで続く。そして実戦。
狙撃手にとっては、今日の実戦さえも明日の実戦のための訓練たり得る。
そうして狙撃手たちは、今直面している状況に最も似た状況を頭の中から捜し出し、
重ね合わせながら引き金を引くのだ。
シンも例外ではない。むしろ彼は王道と呼ぶに相応しい、豊かな経験に支えられているタイプの狙撃手。
軽量機を相手にした経験も多く、そこに今まで見てきたインテリオル機体の挙動の癖を掛け合わせる。
そうすれば、新鋭機といえども大方の動きには予測がつけられる。
両手のアルドラ製グレネードも、見たことがないわけではない。
ここまでわかれば、そう。レンチの撃ち出したグレネード弾頭を逆に撃ち抜くことも、
彼にとってはそう難しいことではないのだ。
彼はライフルを掲げた左腕を下ろさぬまま、右背部狙撃砲の照準を合わせた。
敵機は爆発で硬直し、何より相手リンクスの判断力が鈍っている。
「第4射…。」
撃つとしたら、今。
txt by uoi
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