1章-4



 ブツッと視界が途切れる。
 「?!」
 一登は混乱して上手く頭が回らないままに前を見る。視線の先には白い壁…いや、天井か。待てよ、何故森に天井があるんだ?
 慌てて上半身を起こし辺りを見回す。隙間だらけの本棚、雑誌置き場と化した机、床に投げられた鞄、…。ここは…そう、俺の部屋だ。ようやく脳がマトモに働き始め、事態を把握していく。
 「そうか、さっきまでの事は夢だったのか。」
 先程の出来事、それが夢であった事に安堵し、ポツリと呟いた。
 だがそれにしてもリアルな夢だったな。あの匂いといい、掴まれた感覚といい、実際に今経験した事のように感じられる。夢だと分かった今でもなお。
 まさか実際に過去に経験していた事なのか?一瞬そんな考えが浮かんできたが、すぐに否定する。あれを実際に経験していたならば決して忘れはしないだろう。所詮はたまたま一回見ただけの夢幻だ。
 そう考え自分を納得させようとしたが、どこか釈然としないものを感じる。何かを見落としている様な、いや見えていない様な、そんな気がする。単なる気のせいなのだろうか、それとも…。いや、考え過ぎだろう。深い意味を見出そうとしているのが無理な話なんだ。だが…
 「お兄ちゃん、どうしたのー?もう朝だよー。早く起きないと学校遅れちゃうよー。」
 妹の声で思考の堂々巡りから抜け出る。ふと時計を見ると確かに、もう朝の7時になっている。いつもなら学校に出かけている時間だ。いつも通りに起きていたとすれば、かれこれ40〜50分は考え込んでいた計算になる。将来の事とか現状についてとか考えても大抵10分と持たない俺にしては珍しい事だ。まあ、だからといって何がどうという訳でもないのだが。とりあえず今は早く朝御飯を済ませて、家を出よう。考える時間はいくらでもある。



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