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ここで一旦、舞台は移る。時も少し遡る。
ここはとある神社の境内。参道の両端に生えた桜の木、その内の一本の下に一人の男が立っている。灰色のスーツを着ており、髪も白っぽいところを見ると年は中高年あたりか。懐かしむように桜の木を見上げている。
「こうしていると昔を思い出すな…。お前とこの神社で遊んだ日々を。」
よく見てみると手に何かを持っているようだ。小さい箱だろうか、泥で大分汚れているところを見ると埋めてあったのを掘り起こしたのだろう。改めて男を見てみればスーツのそで口も泥で汚れている。
「覚えているか、約束。小6の卒業式の日に二人でタイムカプセルに思い出の品を入れて、そして埋めて…。50のオジサンになったら二人で掘り起こそうって決めたよな。なのによ…。」
一度言葉を切ると、俯いた。目がうっすら光っている。だが、必死にこらえて言葉を紡ぐ。
「お前が死んで早15年になるか。突然の事だったからな…、最初は信じられなかった。いや、信じたくなかったというべきだろうな。だが、事実だった。」
また、言葉が途切れる。体が小刻みに震えている。やがて、それを振り切ろうとするかのようにグッと顔をあげて桜を見る。
「今、誓いを果たそう。…お前も見ているよな、どこかで。」
男が地面に腰をおろして、箱に手をかける。長い歳月で固着したか、開けるのに少し苦労していたが、程無く箱は開かれた。男は一つ一つ、品を取り出しては過去を懐かしむように眺める。その頃流行っていた玩具、夢中になって集めたビー玉、…。一つ一つの品に込められた思い出が解き放たれていく。
が、一つの封筒を取り出した時、男の表情が変わった。驚きの顔、まるで有る筈の無いものを見ているような顔。慌てて封筒から手紙を出して読み始める。文字通り食い入るように、目を思いきり開いて。読み進めていくうちに男の驚きは更に度を増していく。一通り読み終わった後もしばらく微動だにしない。視点が宙を彷徨っている。
「こ…これは、どういう事なんだ…?本当なのか…?そんな馬鹿な…。だって…。」
そのまま時間は流れていく。やがて男の視点は再び落ち着き始め、一点に定まる。先程までの驚愕の表情は消え、代わりに男の顔には覚悟の表情があった。一歩一歩を踏みしめるように立ち上がり、桜の日を見上げる。
「そういう事か。ならば、俺は行かねばなるまい。真実を見極めるためにも…。お前もそれを望んでいるんだろう?任せておけ、白井。お前の思いは俺が引き継ごう。また、ここへ必ず戻ってくる。それまで、ここで待っていてくれ。」
男は手紙だけを内ポケットにしまい、箱を桜の木の下に埋め戻すと、神社を去っていった。
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