1章-8



 「えっ?!」
 一瞬、康哉の言っている事が理解できない。俺は…信じ…る…お前の…予感を…?お前の…予感を……、つまり俺の予感を…?信じる…?頭の中で先程の康哉の言葉が何回もリピートされる。そして、何度目のリピートだったのか、当然に意味を理解する。康哉の言ったことの意味を。康哉は俺の言葉を信じる…と?
 「もう一度言うぞ。俺はお前の予感を信じる。」
 こちらが混乱している事を察したか、康哉は重ねるように言葉を発した。
 「俺の…単なる夢物語とは思わない…のか?自分でも、自分の言っている事が現実的なことでは無いと思っているんだ。それなのにお前は…信じるというのか?」
 余りに信じ難く、しつこいとは思いながらももう一度聞く。
 「確かに、他人から見れば夢物語の類にしか思えないような話さ。だけどな、現実というのはそうそう理論的なものだけで構成されるものじゃない。よく言われる例とすれば“虫の予感”があるように、理論を越えた出来事は存在する。お前のその夢だって、この類では無いという証拠は無い。更に言うならば、俺はお前の親友だ。俺を頼って相談してくれた親友を、俺が信じてやらないでどうするんだ。そうだろ、一登?」
 俺の疑念を打ち払うように康哉は真っ直ぐな眼で俺に熱く語った。その言葉は俺の中に渦巻く不安も和らげてくれる。思わず言葉が口からもれだす。
 「康哉…ありがとう。」
 「まだ、礼を言われるような事はしていないさ。問題は、お前が自身の不安を消すために何をするかだからな。信じるだけでは何の解決にもならないからね。」
 不安を消すために…何をするか…。そうか、俺にはこの発想が欠けていた。ただ無闇に不安になり、マイナス思考の悪循環に陥るだけで、その不安をどうにかしようという思考は全く無かった。何をやっているんだろうな、俺は。
 「単刀直入に言おう。一番良いのは、調べる事だと思う。」
 「調べる事…?」
 「何故不安に感じるのか。それは“分からないから”だ。その夢が何であるか、どういった意味を持つのか、それが分からないからこそ不安になる。ならば、調べる事で分かれば良い。分かる事で、新しい何かが見えてくる筈だ。」
 康哉は俺を勇気づけるような口調で喋る。
 だが、調べると言っても何をどう調べれば良いのだろうか。康哉の頭の中ではもう道筋が出来ているのだろうが、俺は今の展開についていくのが精一杯で思いつかない。すると、やはりそれを見越したように
 「まぁ、ただ闇雲に調べても駄目だろうから、焦点を絞って調べるのが良いだろうな。お前の夢の例でいけば、例えば森。舞台となった森が何処であるかが分かれば、そこから辿っていくことが出来る。その森にはどんな樹があった?森の中の明るさは?広さは?こうした検証を重ねる事で森を絞っていけば良い。」
 俺はひたすらに感心していた。俺の思考を先回りするかのようにどんどん道筋を示してくれる。俺の選択は間違っていなかったと改めて感じる。
 「成程な…。本当にありがとう、康哉。おかげで何とかすべき事が見えてきた。」
 「いやいや、まだ解決した訳じゃないからな。俺の方でも調べてみるよ。」
 礼を言うと少し照れたようにそう答えた。
 「いや、今日は本当に感謝しているよ。」
 「どう致しまして。じゃあ、またな。」
 そう言い残すと、康哉は帰っていった。
 「あぁ、またな。」



txt by Num




小説