分かれた二人を一人の女が見ていた。一登がお節介として忌避した、藤村香乃その人である。学校からの帰り道に偶然通りかかり、二人が話しているところに出くわしたのだ。話しかけに行こうと思ったが、どうも内密の話らしいので、隠れて聞くことにしたのだ。考えてみれば、一登は登校中の香乃とこの川辺で出会ったのだし、また通りかかってもおかしくないのだが、一登もそこまでは考えが至らなかったようだ。
それはさておき、こうした経緯で香乃は立ち聞きすることにした訳だ。幸か不幸か、香乃は内容をほとんど聴きとる事が出来なかった。お節介の虫が疼いただけに香乃は残念がったが、ふと二人を見ていて思いつく事があった。
「あの二人、何となく……。いや、気のせいよね、多分。それよりも…どう問い詰めてやろうかしら♪」
それを考えるだけで楽しくなってくる香乃であった。
康哉は家へ帰る間、先程の一登の話を思い返していた。
あの夢の内容は一登の考えるように、実際に起こった事なのか…。あの場では「信じる」と言ったものの、本心では半信半疑だった。ただ、一登の追い詰められたような表情を見ては、「信じる」と言わずにはおれなかった。それに、単なる“夢”と割り切る事に心の中で抵抗を覚えたのも事実だ。何にせよ、気になってしまった以上は自分を納得させるためにも真実を確認する事が必要だな。その為に今できる事は調べる事くらいだ。一登にも言ったが、まず調べるべきなのは森だろう。だが…
「実際難しいよなぁ…。だが、だからこそ解決のし甲斐はあるか。」
康哉は頭の中で解決のための道筋を構築し始めていた。
「待てよ?色々例を挙げてもらったから、あたかも簡単な作業かと思いこんでいたが、難しくないか?」
すっかり安心しきっていた一登は、寝る直前というところでその事に気が付いた。
「まぁ、それは当然の話だよな。調べる土台が夢では、あやふやな事も多いだろうし…。実際に起こったかも分からないし、起こったとしてもいつの事かも分からないし。」
考えれば考えるほど不安になってくる。本当に調べて真実を見つけだすことが出来るのか。解決されうるのか。考えの悪循環にまたもや陥りつつある。
「いや、出来るかじゃないんだ。やるんだ。俺にはそれしか無いんだ。」
ぎりぎりのところで自分を奮い立たせる。大丈夫だ。康哉だって協力してくれると言っていた。ならば俺は信じて突き進むのみだ。
固い決意を心に抱き、一登は眠りについた。まだ見えない明日を信じて。
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